田ジ研自主研修 小森谷渓谷 赤壷・白壷露頭訪問
2019.01.23
小森谷渓谷 赤壷・白壷露頭訪問と伝説
2018.01.18//2018.0801//2019.01.23 にかけて首記の活動を行いました。この付近の伝説と露頭の岩石を地質的に紹介しておきます。伝説としては平維盛と村娘お万の物語があり、ごくごく一般的な内容文章を以下最後に転記しておきます。
赤壺・白壺は護摩壇山の南面を源流とする日高川の支流・小森谷の途中に存在しています。一般的には平維盛(これもり)と地元の娘・お万の物語が有名ですが、今回は、地質的な観点により実際の赤い岩・白い岩がどのようなものか写真でまとめてみました。
地質的には日高川層群・美山付加コンプレックス内にあり、赤壺・白壺付近を蟻合谷(ありごうだに)スラストがほぼ東西に貫いています。ここの特徴は付加コンプレックスの名のとおり、海洋性岩体を見ることができます。赤色チャート・白色チャート・緑色泥岩・緑色岩・間にチャートが含まれた断層岩等を見ることができ、天気のよい日にはとてもカラフルに見えることがあります。現在の南紀熊野ジオパークエリア内には付加コンプレックスは存在しますが、このようにカラフルな岩体は見受けられないと思います。
1.2018/08/01 歩行トレイル跡 下流より遡上 白壷で高巻きができず一旦道まで上がり
赤壷で降下
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2.約100年前の絵葉書に描かれた赤壷
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3.
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4.
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5.
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6.
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7.
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8.
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9.
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10.
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11.
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12.
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13.
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14.
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15.
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16.
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17.
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18.
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19.
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20.
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21.
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22.
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23.
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24.
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25.
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26.
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27.
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28.
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29.
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30.
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31.
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32.
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33.
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34.
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35.
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36.
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37.
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38.冬枯れの小森谷渓谷
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平維盛と源頼氏
治承四年(1180)、源頼政の五男頼氏は、宇治川で平維盛の軍勢に死闘を挑みましたが、源氏軍は敗退、闘魂尽きた頼政は自害、長男仲綱・次男兼綱は討ち死に、そして源氏は滅びました。龍神に落ち延びてきた頼氏は、戸野野(現在の殿垣内)に住み、名前を源頼氏 から戸野野頼氏と改めました。武門を捨て、刀を捨て、鋤・鍬・斧を手に取り農夫となって働きました。やがて、戸野野の里人は頼氏を支配者として敬うようになり、尸野野盆地の真ん中にある高台に館を建て、人々はその館を城と呼びした。ちょうどその頃、都落ちした維盛も家臣と共に龍神の奥地にある小森谷渓谷に身を潜めていたのです。「維盛様の身もいつ誰に見つかるか分からない,なぜここに 隠れ住んでいるのか、この地の領主である頼氏に打ち明けて許しを得なければならない」と、家臣は頼氏の屋敷へ行き、事情を話したのです。武門を捨てたとはいえ源氏であった頼氏の領地に、宿敵である平家の維盛が潜んでいたとは...。頼氏の拳は震えていました。源氏の滅亡となった宇治川での戦いが昨日のことのように思い出され、無念の死を遂げた一族を思うと、何とも言えない怒りがこみ上げてきたのです。頼氏の怒りを察した家臣は自分の命と引き換えに維盛を許してほしいと、小刀を差し出しました。「今更、維盛の首を霊前に供えても、同族の魂は浮かばれないだろう。恨みを捨て、彼らを許してやることが霊前への供養になるのではないだろうか。」そう考えた頼氏は彼にこう言いました。「維盛なら今頃、屋島で三位中将の武具を纏い三軍を統帥しておられる。お主が申される方はおそらく偽り者だ。最近、各地でこのようなくせ者が出没し、善良な住民を欺いているようだ。お主らも十分に気を付け、このような偽り物に惑わされずに農作物の手入れに精を出すがよい。」頼氏の心の大きさに感動した家臣は、大声で泣きました。
数日後、頼氏のもとに手紙が届きました。「小森在所の落ち人四十数名を龍神領の百姓として、子孫に至るまでかわいがって頂けますようお願い致します。寿永三年(1184)九月吉日」何度も何度も手紙を読み返した頼氏の目には、涙があふれていました。雪が降り積もる寿永四年二月、平宗盛を中心とした騎馬兵は屋島に小さな城を建て、三百数隻の水軍は瀬戸内の海を平家の紅旗で埋め尽くしていました。さらに田辺湛増の率いる熊野水軍が加勢されることは間違いなく、平家の再興は夢ではありませんでした。瀬戸内が季節はずれの大暴風雨にみまわれた二月下旬、遂に熊野水軍が屋島に乱入したのです。しかし船首には、源氏の白旗が揚げられていたのです。湛增は平家を裏切ったのです。屋島本陣は海上の異変にうろたえているすきに、義経軍に攻められました。寿永四年(1185)三月、八歳になった安徳天皇の御手をとった二位局が「海の底にこそ都ぞ候」と言い、神器や王者、平家20年の歴史と共に壇ノ浦の海に消えたのです。小森にも春が訪れた四月、頼氏のもとにその噂が入り、頼氏はすぐに維盛の家臣を呼びました. 平家滅亡の事実を、維盛という方に伝えてくれ。そして、これも運命とあきらめ、御自愛されること田辺水軍に平家の全てを託し、小森の奥地で過ごした1年余り、堪えがたい日々であったに違いない。そんな維盛卿に壇の浦の合戦で平家が滅亡したという事実を伝えなければならない。残酷なことだが、事実は隠せるものではない。屋敷に戻った家臣を見た維盛は、不吉な知らせだと察し、「覚悟はできておる、話してくれ。」と言いました。「賴氏公からの直々の御伝言です。屋島の本陣は、平家を裏切った熊野水軍と義経による奇襲にあって潰え去り、安徳天皇をはじめ一族は皆、壇の浦の海へ消えました。天下は源氏のものとなり、平家の面影すらありません。有為転変は武士の宿命御命を大切にされますようにと申されていました。維盛様の心中と衛門・嘉門の忠僕を思いますと…。」「そうか頼氏殿じきじきか、ならば疑念はない。心配するな、思慮分別はわきまえておる。」と言って谷へと歩き出しました。維盛は、宇治川の合戦で背面の将として出陣していました。源頼政一族の討ち死には昨日の悪夢で、末っ子である頼氏が平家の探索をくぐりぬけ龍神の地に逃れてきていることは知っていました。そして維盛は、その頼氏の足元に養われていたのです。また、頼氏も領地に平家の落ち人が来て、田畑を耕していることは知っていました。しかし、一度もその場に行かず、彼らが落ち人から百姓になることを期待していたのです。このように維盛と頼氏は、宿敵ではなく、この地に逃げてきた落ち人として互いに理解しあっていたのかもしれません。互いを思いやる優しい心は、きっと小森谷の豊かな自然によって育まれたのでしょう。
お万の伝説
戦に敗れ敵の追手から逃れ、小森谷へやってきた平維盛は、彼の父重盛の代から仕えていた家臣、衛門と嘉門の兄弟とともに平家再興を願いながらひっそりと暮らしていました。やがて維盛は、小森に住むお万という娘と恋に落ちました。月日が経ったある日、平家の滅亡を知らされた維盛は護摩山頂に登り、平家復興の吉凶を占いました。凶という結果に希望を失った維盛は、眼下に広がる小森谷渓谷に別れを告げて死出の旅に出たのです。
維盛が那智の滝で自殺したことを知った衛門と嘉門は、屋敷から更に小森谷渓谷上流の滝に身を投げました。その翌朝、恋人を失ったお万も死を決意し、野菊模様の着物に最初で最後の薄化粧をして小森谷渓谷を上りました。白粉の残りを清流に流し、少し上った小さな滝に紅を溶かしました。そしてもう少し上流にある深い淵に身を投げたのです。衛門と嘉門が身を投げた滝を「衛門・嘉門の滝」、そこから約3km下流にある淵を「お万が淵」、お万が白粉を流した滝を「白壺の滝」、紅を溶かした滝を「赤壺の滝」と呼び、今でも白色紅色の岩肌をしているのは、お万の悲しみが残っているからだと 言われています。
2018.01.18//2018.0801//2019.01.23 にかけて首記の活動を行いました。この付近の伝説と露頭の岩石を地質的に紹介しておきます。伝説としては平維盛と村娘お万の物語があり、ごくごく一般的な内容文章を以下最後に転記しておきます。
赤壺・白壺は護摩壇山の南面を源流とする日高川の支流・小森谷の途中に存在しています。一般的には平維盛(これもり)と地元の娘・お万の物語が有名ですが、今回は、地質的な観点により実際の赤い岩・白い岩がどのようなものか写真でまとめてみました。
地質的には日高川層群・美山付加コンプレックス内にあり、赤壺・白壺付近を蟻合谷(ありごうだに)スラストがほぼ東西に貫いています。ここの特徴は付加コンプレックスの名のとおり、海洋性岩体を見ることができます。赤色チャート・白色チャート・緑色泥岩・緑色岩・間にチャートが含まれた断層岩等を見ることができ、天気のよい日にはとてもカラフルに見えることがあります。現在の南紀熊野ジオパークエリア内には付加コンプレックスは存在しますが、このようにカラフルな岩体は見受けられないと思います。
1.2018/08/01 歩行トレイル跡 下流より遡上 白壷で高巻きができず一旦道まで上がり
赤壷で降下
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2.約100年前の絵葉書に描かれた赤壷
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3.
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4.
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5.
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6.
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7.
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8.
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9.
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10.
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11.
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12.
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13.
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15.
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18.
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19.
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20.
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21.
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22.
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25.
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26.
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27.
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28.
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29.
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30.
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33.
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34.
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35.
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36.
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37.
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38.冬枯れの小森谷渓谷
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平維盛と源頼氏
治承四年(1180)、源頼政の五男頼氏は、宇治川で平維盛の軍勢に死闘を挑みましたが、源氏軍は敗退、闘魂尽きた頼政は自害、長男仲綱・次男兼綱は討ち死に、そして源氏は滅びました。龍神に落ち延びてきた頼氏は、戸野野(現在の殿垣内)に住み、名前を源頼氏 から戸野野頼氏と改めました。武門を捨て、刀を捨て、鋤・鍬・斧を手に取り農夫となって働きました。やがて、戸野野の里人は頼氏を支配者として敬うようになり、尸野野盆地の真ん中にある高台に館を建て、人々はその館を城と呼びした。ちょうどその頃、都落ちした維盛も家臣と共に龍神の奥地にある小森谷渓谷に身を潜めていたのです。「維盛様の身もいつ誰に見つかるか分からない,なぜここに 隠れ住んでいるのか、この地の領主である頼氏に打ち明けて許しを得なければならない」と、家臣は頼氏の屋敷へ行き、事情を話したのです。武門を捨てたとはいえ源氏であった頼氏の領地に、宿敵である平家の維盛が潜んでいたとは...。頼氏の拳は震えていました。源氏の滅亡となった宇治川での戦いが昨日のことのように思い出され、無念の死を遂げた一族を思うと、何とも言えない怒りがこみ上げてきたのです。頼氏の怒りを察した家臣は自分の命と引き換えに維盛を許してほしいと、小刀を差し出しました。「今更、維盛の首を霊前に供えても、同族の魂は浮かばれないだろう。恨みを捨て、彼らを許してやることが霊前への供養になるのではないだろうか。」そう考えた頼氏は彼にこう言いました。「維盛なら今頃、屋島で三位中将の武具を纏い三軍を統帥しておられる。お主が申される方はおそらく偽り者だ。最近、各地でこのようなくせ者が出没し、善良な住民を欺いているようだ。お主らも十分に気を付け、このような偽り物に惑わされずに農作物の手入れに精を出すがよい。」頼氏の心の大きさに感動した家臣は、大声で泣きました。
数日後、頼氏のもとに手紙が届きました。「小森在所の落ち人四十数名を龍神領の百姓として、子孫に至るまでかわいがって頂けますようお願い致します。寿永三年(1184)九月吉日」何度も何度も手紙を読み返した頼氏の目には、涙があふれていました。雪が降り積もる寿永四年二月、平宗盛を中心とした騎馬兵は屋島に小さな城を建て、三百数隻の水軍は瀬戸内の海を平家の紅旗で埋め尽くしていました。さらに田辺湛増の率いる熊野水軍が加勢されることは間違いなく、平家の再興は夢ではありませんでした。瀬戸内が季節はずれの大暴風雨にみまわれた二月下旬、遂に熊野水軍が屋島に乱入したのです。しかし船首には、源氏の白旗が揚げられていたのです。湛增は平家を裏切ったのです。屋島本陣は海上の異変にうろたえているすきに、義経軍に攻められました。寿永四年(1185)三月、八歳になった安徳天皇の御手をとった二位局が「海の底にこそ都ぞ候」と言い、神器や王者、平家20年の歴史と共に壇ノ浦の海に消えたのです。小森にも春が訪れた四月、頼氏のもとにその噂が入り、頼氏はすぐに維盛の家臣を呼びました. 平家滅亡の事実を、維盛という方に伝えてくれ。そして、これも運命とあきらめ、御自愛されること田辺水軍に平家の全てを託し、小森の奥地で過ごした1年余り、堪えがたい日々であったに違いない。そんな維盛卿に壇の浦の合戦で平家が滅亡したという事実を伝えなければならない。残酷なことだが、事実は隠せるものではない。屋敷に戻った家臣を見た維盛は、不吉な知らせだと察し、「覚悟はできておる、話してくれ。」と言いました。「賴氏公からの直々の御伝言です。屋島の本陣は、平家を裏切った熊野水軍と義経による奇襲にあって潰え去り、安徳天皇をはじめ一族は皆、壇の浦の海へ消えました。天下は源氏のものとなり、平家の面影すらありません。有為転変は武士の宿命御命を大切にされますようにと申されていました。維盛様の心中と衛門・嘉門の忠僕を思いますと…。」「そうか頼氏殿じきじきか、ならば疑念はない。心配するな、思慮分別はわきまえておる。」と言って谷へと歩き出しました。維盛は、宇治川の合戦で背面の将として出陣していました。源頼政一族の討ち死には昨日の悪夢で、末っ子である頼氏が平家の探索をくぐりぬけ龍神の地に逃れてきていることは知っていました。そして維盛は、その頼氏の足元に養われていたのです。また、頼氏も領地に平家の落ち人が来て、田畑を耕していることは知っていました。しかし、一度もその場に行かず、彼らが落ち人から百姓になることを期待していたのです。このように維盛と頼氏は、宿敵ではなく、この地に逃げてきた落ち人として互いに理解しあっていたのかもしれません。互いを思いやる優しい心は、きっと小森谷の豊かな自然によって育まれたのでしょう。
お万の伝説
戦に敗れ敵の追手から逃れ、小森谷へやってきた平維盛は、彼の父重盛の代から仕えていた家臣、衛門と嘉門の兄弟とともに平家再興を願いながらひっそりと暮らしていました。やがて維盛は、小森に住むお万という娘と恋に落ちました。月日が経ったある日、平家の滅亡を知らされた維盛は護摩山頂に登り、平家復興の吉凶を占いました。凶という結果に希望を失った維盛は、眼下に広がる小森谷渓谷に別れを告げて死出の旅に出たのです。
維盛が那智の滝で自殺したことを知った衛門と嘉門は、屋敷から更に小森谷渓谷上流の滝に身を投げました。その翌朝、恋人を失ったお万も死を決意し、野菊模様の着物に最初で最後の薄化粧をして小森谷渓谷を上りました。白粉の残りを清流に流し、少し上った小さな滝に紅を溶かしました。そしてもう少し上流にある深い淵に身を投げたのです。衛門と嘉門が身を投げた滝を「衛門・嘉門の滝」、そこから約3km下流にある淵を「お万が淵」、お万が白粉を流した滝を「白壺の滝」、紅を溶かした滝を「赤壺の滝」と呼び、今でも白色紅色の岩肌をしているのは、お万の悲しみが残っているからだと 言われています。