第20回 印南漁港~畑野崎一周~美浜町・煙樹ヶ浜~三尾海岸~西山管制塔
2017.12.23
第20回 印南漁港~畑野崎一周~美浜町・煙樹ヶ浜~三尾海岸~西山航空管
制塔

12.23 快晴 20名の参加
<行程予定>
印南漁港→畑野崎一周(音無川付加体地質構造・音無川の鍵層=タービダイトの堆積構造・付加体の褶曲構造など)→昼食→美浜町・煙樹ヶ浜→三尾海岸(日高川付加体・構造ユニット=スラスト・枕状溶岩など)→西山航空管制塔(珪長質凝灰岩、煙樹ヶ浜海岸の地形を遠望(ビーチカスプ等)

何かと気ぜわしい師走ですが、この日の天気は数日前からの風も無く暖かく絶好の巡検日和でした。紀伊半島の土台を成す四万十帯のうち、音無川付加体と日高川付加体について久々に南紀熊野ジオパーク学術専門委員中屋志津男氏にご指導頂きました。

<09:30>
印南漁港集合
<09:40>
四万十帯の音無川付加体・日高川付加体について中屋氏から簡潔な概要説明を受けました。
<10:00>
堤防から海側に降りると洗濯岩のような磯と、斜面に描かれた緩やかな屈曲構造の地層が目に飛び込んで来ます。ここは海底扇状地で堆積された泥岩勝ちの砂岩・泥岩互層(タービダイト)堆積の様子がとても分かり易く現れています。配布頂いた資料と照らし合わせながら外海方面に歩いて行くと、付加体の特徴である褶曲が、背斜と向斜、更に上下逆転されている軸ポイントがあり、砂岩の級化、ラミナ、生痕化石を参考に地層の上下当てクイズで盛り上がりました。次にこの海岸の特徴について、堤防から約200m離れた足元の音無川層群最下部の瓜谷層には、一般的な砂岩ではなさそうな赤と緑の岩が波打ち際に平行に並んでいる事でした。それは、海洋性岩石といわれる赤色泥岩と緑色泥岩で、地学的には鍵層と呼ばれるようです。そして、この近くの泥岩の中には拳大くらいの石灰質ノジュールも所々に混在しています。これは一般的に「古谷石(ふるやいし)」と呼ばれて、愛石家の間では有名です。この石のでき方について説明をいただきました。 
又、外海に面した所には、固結前に形成されたといわれる鋭角なシェブロン(shevron)褶曲,
箱型の共役褶曲と断層が芸術的に現れています。一体どのような屈曲の仕方なのでしょうか?見れば見るほど悩めば悩むほど頭の中は整理が出来なくトランス状態のまま、次の目的地へ向かうことにしました(既にタイムオーバ)。結局、印南町畑野崎海岸では、音無川羽六層下部と瓜谷層の見分け、地層の変形の仕方や、タービダイトについて参加者が理解を深めることが出来た一日でした。
   (※注釈 印南町畑野崎漁港から御坊市の塩屋までが海岸段丘です。)
<12:30>
各自、乗り合いにて昼食を自由行動(ドライブイン、屋外、スーパー等)で楽しみました。
<14:00>
再度、集合。
煙樹ヶ浜海岸を波打ち際まで散策し、煙樹ヶ浜のできた歴史を説明していただきました。紀伊半島では河口から海を見て、右側に砂州ができるようです。カスプ(波が打ち寄せる模様)Cuspの説明を受けたが、今回は西山からの俯瞰は時間的にできませんでした。
<15:00>
三尾海岸(アメリカ村)逢母海岸
ここの枕状溶岩には一部、石灰岩が取り込まれています。これは、海底火山の溶岩噴出時に、近辺にあった珊瑚由来の石灰岩を取り込んだ模様です。又、枕状の塊の間には泥岩が挟まり南紀熊野ジオパークサイトの枕状溶岩と比べると球状がよりはっきりしている模様でした。又、枕状溶岩の上下の見方の説明があり、実物を見て納得ができました。
断層破砕帯が海岸に東西方向に走っています。帯状の中の岩塊は断層岩と呼ばれていますが、これは付加体の横から見た模式図では一般に付加体スラストと呼ばれているものです。今回、巡検したスラストは幅30~50メートルくらいありましたが、地質図には掲載されていない、小さいスラストということでした。礫岩とかが様々に入り混じった地質で一般的にメランジュ(メレンゲと同意語)とも呼ばれています。

<16:30>
西山までは訪問できませんでしたが、各自、満足した様子で三尾・逢母海岸で解散・帰途につきました。

***古谷石(ふるやいし)とは:
日本に産する代表的観賞石の一つ。京都の加茂川石と併称されるが、歴史はむしろ古く、江戸中期、正徳(しょうとく)・享保(きょうほう)(1711~36)のころからといわれ、とくに文人墨客に深く愛好された。主産地は和歌山県西牟婁(にしむろ)郡秋津川地区から日高郡西本庄にかけての山中。いわゆる土中石で、掘り出して灰土を落とし、丹念に仕上げる。山水景石、姿石などに名品が多い。主として台座で観賞される。江戸期には紀州田辺藩の「お留め石」[村田圭司]ニッポニカより
1:今回の巡検訪問場所です

2:印南漁港に集合しました

3:晴天!とても暖かい

4:イソギク です

5:歩き出すと地層を見つけて興味深々です

6:切目崎の方を見ています

7:ハマナデシコ です

8:細いストライプ仕立ての 四万十付加体(音無川層群羽六層下部)

9:タ-ビダイトの説明(級化、ラミナー、葉理等)をしています

10:海成段丘の斜面

11:頭上はかなり崩れやすくなっています

12:座り込むと暫く動かない

13:ソールマークに生痕化石を発見!

14:ここにもあります

15:古谷石の赤ちゃんでしょうか

16:浸食されて洗濯板のような整然層

17:砂岩層が少し厚くなっています

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21:古谷石のでき方を説明しています
海溝の泥層上に水流の具合により穴ぼこができ、そこに石灰質の成分がたまって ノジュール状態になっていきます。深度3000Mあたりの炭酸塩補償深度(CCD)が関係するそうです。
(以下、Wikipediaより)Carbonate Compensation Depth, CCD
海水中においては、炭酸カルシウムは以下の式のように溶存・固化状態が変化する。

C a C O 3 + C O 2 + H 2 O ⇌ C a 2 + ( a q ) + 2 H C O 3 − ( a q )

浅深度の海中に生息する石灰質プランクトンは炭酸カルシウムの殻を形成する。プランクトンの遺骸は、深海へと沈降していく。海底の深度がCCD以浅の場合、炭酸カルシウムはあまり溶解せず、炭酸塩海底堆積物が形成される[1]。CCD以深の海中においては、上記式の右側への反応が進み、炭酸カルシウムが海中へ溶解し、炭酸塩海底堆積物が形成されなくなる。この溶解反応は低温・高圧ほど進みやすい。
CCDは、温度、圧力、イオン濃度にも影響されるが、太平洋では4,000-5,000 mであり、大西洋(5,000-5,500 m)よりも浅い。また高緯度ほどCCDは浅くなる。

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25:泥岩層が厚くなっています

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27:古谷石の小片です

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31:瓜谷層を見ています

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33:赤色・緑色部分が瓜谷層の鍵層になります

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38:不思議な褶曲です

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41:西日本の地質の押され具合を西部構造線を中心に説明中です

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48:この付近の褶曲は面白いです

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56:山形褶曲(shevron fold)の説明をしています

57:不思議ですね

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59:集合写真1

60:集合写真2

61:共役褶曲(Conjugate fold)です

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63:ステゴザウルスの背中のようです

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83:畑野崎の海岸段丘上から見た眺め、まさに洗濯板のようです

84:美浜町・煙樹ヶ浜に来ました

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87:煙樹ヶ浜が縄文時代からできた歴史を説明しています

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89:カスプの例・カラパイアより

90:石ころを見ながら、煙樹ヶ浜を退散です

91:三尾海岸に来ました

92:枕状溶岩です

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94:方解石がはさまっています

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96:珊瑚由来の石灰岩があります

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99:方解石にサンポールをかけてみました->泡立ちます

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101:横倒しになっている枕状溶岩です

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104:断層破砕帯をみています

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108:断層岩・礫がはさまっています

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110:東に向かって断層破砕帯(=付加体スラスト)の断層岩が続いています

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2017.12.23 00:08 | 固定リンク | 研究会活動履歴

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